注意欠陥多動性障害(ADHD)とは
ADHDは、年齢や発達段階に比べて、注意を持続させることが難しかったり、落ち着きがなかったり、思いついたことをすぐに行動に移してしまうといった特徴がみられる発達障害の一つです。
こうした注意や集中、行動のコントロールが難しいのは、脳の働きの違いによって引き起こされると考えられており、脳の機能の問題や、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンといった神経伝達物質のバランスなどが背景にあるとされています。
ただ叱ったり、努力を求めたりするだけで解決できるものではありません。
同じ発達障害でも、自閉症スペクトラム障害(ASD)は対人関係の困難や強いこだわりが主な特徴であるのに対し、ADHDでは注意の散漫さや多動性・衝動性が中心となります。ただし、お子さんによっては、ASDとADHDの両方の特性を併せ持っている場合もあります。それぞれの特性を理解し、丁寧な対応をしていくことが大切です。
特徴的な症状(特性)
ADHDの症状は、大きく「不注意」「多動性」「衝動性」の3つに分けられますが、お子さんによって現れ方はさまざまです。
不注意の傾向が強いタイプ
授業中にぼーっとして話を聞き逃していることや、ノートが白紙のままであったりすることがあります。また忘れ物や失くしものを頻繁にする、細かいところまで気が回らずミスが多い、といった様子も見られます。宿題に取りかかるのが遅く、始めてもすぐに別のことに気を取られてしまうことも少なくありません。
多動・衝動性が強いタイプ
授業中など、じっと座っていることが難しく、席を立ち回ってしまったり、順番を待つのが苦手だったり、会話に割り込んでしまうといった行動が見られます。手や足をいつも動かしていたり、話し続けたりすることも多く、大人から見ると「落ち着きがない」と感じられることが多いようです。
多動・衝動性と不注意が混在しているタイプ
注意が続かない一方で、行動が先走ってしまうといった複雑な困りごとが重なって見られます。こうした特性は「わざとやっている」のではなく、その子の脳の特性によるものであり、周囲の理解と支援が必要です。
成長段階で現れる特性、二次的問題のリスク
ADHDは、小児期のお子さんのおよそ5~7%にみられるとされており、決して珍しいものではありません。多くの場合、乳幼児期には「元気な子」「やんちゃな子」と捉えられることが多いのですが、集団生活が始まる保育園や小学校で、落ち着いて話を聞くことが求められるようになると、困難が明らかになってくることがあります。
ADHDの症状がうまくコントロールされずに続くと、自信を失ったり叱責される経験を繰り返すことで、自己肯定感が下がってしまったり、不安や抑うつといった二次的な問題につながることもあります。さらに、ADHDの特性は成長とともに変化しますが、大人になってからも不注意や衝動性が続く方もいます。仕事や人間関係における困りごとにつながることがあります。子どものころから適切な支援を受けることで、大人になってもよりよい日常生活を送ることが可能ですし、大人になってからでも治療や助言を受けることで過ごしやすくなります。
ADHDの治療について
環境調整・療育
ADHDの治療の第一歩は、日常生活や学習環境を整えることです。たとえば、集中しやすい静かな場所を作ったり、課題を小さなステップに分けて提示したりすることで、お子さんが成功体験を積みやすくなります。また、スケジュールを表などに可視化して見通しを持たせる、わかりやすいルールを決める、持ち物リストを作る、といったことも有効です。療育では、社会的なスキルや感情のコントロール、自己理解を深めるためのプログラムを通して、お子さんの成長を支えていきます。
ペアレントトレーニング
ADHDのお子さんをもつ親御さんは皆さまお子さんへの接し方で悩まれています。社会に適応することをサポートしようとすると、どうしても叱りすぎてしまう、ということは往々にして起こります。そこで親御さんに対し、注意の仕方、ほめ方を学んでいただくことで、親子関係の改善やお子さんの二次的な問題の予防を行うことができると言われています。
薬物治療
症状が強く、日常生活に大きな支障がある場合には、薬物療法を検討することがあります。主に使用されるのは、「メチルフェニデート(コンサータR、ビバンセR)」や「アトモキセチン(ストラテラR)」「グアンファシン(インチュニブR)」です。これらは注意力や衝動性を調整する脳内の神経伝達物質に働きかけ、集中力を高めたり、衝動を抑えたりする効果があります。お子さんの症状や体質に合わせて処方し、効果や副作用を丁寧に観察しながら、医師とご家族で相談しつつ進めていきます。※当クリニックの所属医師は全員、コンサータ・ビバンセの処方登録医です。
当クリニックの診療について(例)
当クリニックでは、まず保護者の方から丁寧にお話を伺い、お子さんの成育歴や現在の困りごとを一緒に整理していきます。必要に応じて、知能検査や行動評価などの心理検査を行い、ADHDの傾向や関連する発達特性を多面的に捉えます。診断の有無だけでなく、「日常生活の中でどのように困っているか」「どのような支援が役立つか」をご家族と共有し、具体的な対応について一緒に考えていきます。また、園や学校との連携が必要な場合には、保護者の方とご相談のうえ、必要な書類作成や情報提供にも対応いたします。






