強迫性障害とは
強迫性障害とは、自分の意思とは関係なく頭に浮かんできてしまう考えやイメージ(強迫観念)にとらわれ、その不安や不快感を振り払うために、ある行動(強迫行為)を繰り返してしまう心の病気です。
本人も「やめたい」「意味がない」と思っているにもかかわらず、自分の力ではコントロールできず、日常生活に支障をきたしてしまいます。
強迫観念とは
たとえば、「汚れている気がする」「何か悪いことが起きるのではないか」「間違っていたらどうしよう」といった不安な思考が繰り返し頭に浮かび、離れなくなってしまいます。
これは現実に根拠がなくても、「念のため」「万が一」を気にしすぎてしまう状態であり、非常に強い不安や不快感を伴います。
強迫行為とは
強迫観念による不安を打ち消すために、特定の行動を何度も繰り返してしまうのが強迫行為です。子どもの場合、次のようなパターンがよく見られます。
- 確認行為
- 「ドアがちゃんと閉まっているか何度も確認する」「宿題を出したか何度も先生に聞く」「カバンの中を繰り返し見直す」
- 洗浄行為
- 「手にばい菌がついている気がして、何十回も手を洗う」「服や靴を頻繁に着替える」「学校で使う物を異常にきれいに拭く」
- 整理・対称へのこだわり
- 「鉛筆やノートの角度を揃えないと気がすまない」「左右対称でないとやり直す」「机の上が乱れていると集中できない」
- 数字へのこだわり
- 「3の倍数で階段を上がらないと落ち着かない」「特定の数字(たとえば4)を避ける」「時計が●時●分ちょうどでないと行動を始められない」
- 儀式行為
- 「寝る前のルーティーンを厳密に守らないと不安になる」「靴を決まった順序で履かないと気がすまない」「ある言葉を心の中で何度も唱えてからでないと外出できない」
これらは一見“こだわり”や“几帳面な性格”と受け取られがちですが、本人が苦しみ、それによって生活に支障が出ている場合は、強迫性障害の可能性が考えられます。
お子さまならではの強迫性障害の症状
発症しやすい時期と初期症状
強迫性障害は、小学校中学年から思春期にかけて発症しやすいとされています。
きっかけはささいな不安や心配事から始まり、「その気持ちを消すための行動」が、次第に本人の意思を超えて繰り返されるようになります。
初期段階では、「急に手を洗う回数が増えた」「準備に異常に時間がかかるようになった」「やたらと確認をするようになった」など、日常の中に“少し奇妙なこだわり”が見え隠れするようになります。
親を巻き込む儀式行為
お子さまの場合、「自分ひとりでは不安が抑えられない」と感じると、親に対して確認を求めたり、ある行為を一緒に行うよう求めたりするケースがよくあります。
たとえば、
「ちゃんと手を洗ったか、ママ確認して」
「いま汚いところを触ったから手を洗って」
「“だいじょうぶ”って5回言ってくれないと眠れない」
といった行動です。親が応じることで一時的には安心しますが、結果として強迫行為を強化してしまうため、対応には注意が必要です。
学校生活で現れる変化
強迫性障害は、学校生活にもさまざまな影響を及ぼします。例としては、
- 時間内にノートを取れず、授業についていけなくなる
- 消しゴムで何度も消し直し、提出物が仕上がらない
- 身支度や準備に時間がかかり、登校が遅れる(遅刻が多くなる)
- 手洗いに時間がかかり、休み時間にトイレを済ませられない
- “ちゃんとやったか不安”で、先生に何度も質問する
これらの行動は、最初は不安を和らげるために始まっても、次第に自分でもコントロールできなくなっている状態です。
ADHDやASDなどの発達特性と間違われることもありますが、強迫性障害では「不安を打ち消すために仕方なくやっている」点が大きな特徴です。
本人も「やめたいけどやめられない」と苦しんでいることが多いのです。
子どもの強迫性障害の診断
強迫性障害は、お子さまでも100人に1~2人程度にみられる比較的よくある病気です。
最初は「ちょっとしたこだわり」や「几帳面な性格」として見過ごされることもあります。
しかし強迫性障害が放置されると、不登校や引きこもりにつながってしまったり、生活に支障をきたしたりするようになります。
そのため、早く気づいてあげることが大切です。
症状に合わせ、適切な治療とサポートを受けることで、症状は少しずつ軽くなっていきます。
強迫性障害のあるお子さまへの対応
心理療法
強迫性障害には、認知行動療法(CBT)が有効とされています。
「不安な考えにどう向き合うか」「強迫行為をせずに乗り越える力をどう育てるか」を、段階的に練習していきます。
特に、あえて不安な状況に身を置き、強迫行為を我慢するようにするエクスポージャー(曝露療法)は有効とされています。
まずは不安度の低いことから挑戦し、トレーニングを行って、我慢できたという成功体験を積み重ねることによって強迫行為を減らしていきます。
最初は小さな不安から取り組み、少しずつ自信をつけていくことが大切です。
薬物療法
強い不安や苦しさが続く場合には、薬物療法を併用することもあります。
お子さまにはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬を低用量から慎重に使用します。
薬は「不安の強さを少し和らげる」ための補助的な役割であり、心理療法とあわせて用いることで効果が高まります。
副作用の有無も丁寧に確認しながら慎重に進めていきます。
環境調整
家族や学校が強迫性障害に対して正しく理解して協力することが必要不可欠です。
家族や周囲の大人が、確認行為に付き合ったり強迫行為を手伝ってしまうことで、症状が強くなってしまうことがあります。
まずは「あなたが苦しんでいるのを理解しているよ」と共感する姿勢が大切です。
学校側とも連携し、学習面や生活面で、安心できる環境づくりを進めていくことが重要になります。
当クリニックの診療について
当クリニックでは、お子さまの不安やこだわりの背景を丁寧に見つめ、少しずつ「できること」を増やすサポートを行っています。
「やめたいのにやめられない」苦しさを、ひとりで抱え込まなくて大丈夫です。
ご家族の不安にも寄り添いながら、一緒に進んでまいりますので、まずはどうぞご相談ください。






